『組織変革』のスイッチの入れ方

『組織変革』のスイッチの入れ方

 何故だ!これだけ必死にやっても組織が生まれ変わらないのは!?  パソコンとインターネットの普及によるIT革命で、わたし達のビジネス環境は大きく変わった。あらゆる産業でビジネスの在り方が再考されたまさにパラダイムの変革だ。21世紀に入りパラダイムシフトはさらに加速。AI、ロボット、ビッグデータ。経営者も社員も歳を重ねているオーナー中小企業にとっては、黒船到来の時代である。ヒトモノカネの全てに限りがあるなかでどう対処すればよいのか、あれこれ戦略や計画を立ててみても過去の形からの脱却が進まない。  ビジネス環境の大変動が続くこの時代。投入した予算や戦略・計画を無駄に終わらせないために、組織が大きく生まれ変わるために押すべきスイッチとは―。

この記事を読むのに必要な時間は約 13 分です。

ここで学べる事

  • 中小企業の組織硬直化の実情
  • 組織が変化を起こしはじめるスイッチ
  • 変革前にスイッチオンが必要な理由

中小企業の組織硬直化の実情

長い月日を組織の本質的変化を起こさずとも儲け続けられた企業。
しかしある時、突如訪れた環境悪化で急速に沈む業績。
時代変化に飲まれ危機的状況にある。変革が必要だ!
だが・・・、ん!何故、うちは革新的組織変革が起こせないのだ!?

 これは、あらゆるオーナー中小企業に起こりうることです。主要因は、組織の硬直化。いま、深刻な組織硬直化がすすむ中小企業が増えています。実際のデータを、中小企業庁の中小企業白書からいくつかご紹介しましょう。

ヒト:高齢化する中小企業の経営者

 経営者の年齢分布です。最も多い経営者の年齢は1995年の47歳→2018年には69歳へと高齢化が進んでいることが分かります。

ヒト:従業員を確保できない中小企業

 中小企業の人手不足感のグラフです。2013年の終盤以降、全業種で人手が足りていないと答える企業の割合が優勢となり、その後も人手不足感は年々強まり続けている状況にあります。

モノ:IT投資をしない中小企業

 IT投資の指標としてソフトウェア投資額・ソフトウェア投資比率の推移を見てみます。中小企業の投資比率は、大企業の半分以下と大きな差が生じています。

モノ:老朽化が進む中小企業の設備

 設備年齢の推移です。大企業と中小企業で設備年齢が同水準だった1990年度の指数を100とすると、中小企業の設備年齢が大企業を上回る勢いで上昇しているのが分かります。

カネ:中小企業の現預金は増加

 5年間の中小企業の貸借対照表の推移です。利益剰余金等が増加傾向で現預金が増加する一方、有形固定資産・無形固定資産がほぼ横ばい傾向にあることから、中小企業が積極的に設備投資を行っていないことが分かります。

 中小企業のヒトモノカネに関わる実情をご紹介しました。如何でしょうか。経営者は歳を重ね、金があったとしても社員や、設備、ITに対しては投資を積極的には行わず、こちらも高齢化や老朽化が進んでいる。時代の変化に対して組織が硬直化するのも頷けます。

組織変化開始のスイッチ

 それでは硬直化した組織が柔軟性を取り戻すためにはどうしたらよいのでしょうか。

  経営理論に加えて企業コンサルティングの経験も踏まえると、『経営判断の機能』、『戦略構築の機能』、『リーダーのスタイル』の3視点がポイントであると感じます。オーナーの力が社内で大きい中小企業においては、各組織階層がこれらの視点へ対処することが組織硬直化是正のカギとなるのです。

 順番に3視点のそれぞれを説明しましょう。

『経営判断の機能』

社内に起こっていること

 実効性ある戦略構築も、それに基づいた組織の構造改革もできない状態です。

 戦略論の鉄則として、組織は戦略に従い、戦略は組織文化・風土に従います。組織内に企業変化を阻害する空気があると、気づかないうちに戦略は制約をうけ実効性の低いものとなり、それを踏まえた組織変革も効果が限定的なものとなるのです。

原因

 変化を抑制する空気が蔓延した状態はずばり、企業オーナーへ社員が遠慮(必要以上に空気を読む)することで発生します。

 この会社はオーナーのモノという感覚があるために、大きなリスクを伴う大胆な経営判断を打ち出せない。また、大きな変革プランがあっても決断はオーナー社長がするものとの意識があるのです。

対策

 対策は二つ。1つ目は高齢オーナーの企業などは是非改めて考えて頂きたい、代表権の委譲になります。中小企業の事業承継は簡単にできることではありませんが、会社代表権を次の経営者へ渡すことのポジティブ効果は統計的にも分かっています。

 2つ目の対策案は、代表権委譲が難しい企業では必ずチェックしていただきたいです。オーナーの君臨する企業においては、取締役といえども発言力が弱く取締役会が適正に機能していない場合が多いのです。これは、商売がうまく運んでいるときはいいのですが、非常時には変革プランを構築・展開するうえでの障害となります。

 オーナー以外の各取締役は、”担当領域を主軸に状況改善へ向けた議案を立案・提案すること”、”権限と責任をもって決議に参加し過半数決議を行うこと”、”取締役会などでの意思決定決議は議事録作成+全取締役署名で記録に残していくこと”を徹底するようにします。

『戦略構築の機能』

社内に起こっていること

 社内のどこからも変革につながる戦略が浮かばない状態。

 以下のような状態の企業が当てはまります。

  • 数か月~半年での単月黒字含めた、急進的戦略が出来ていない。
  • 役員クラスからの草案がない。
  • 部長クラスからの具体性に裏づく草案がない。
  • 戦略判断のための客観的情報が集まらない。

原因

 抜本的戦略を展開できない原因として3つ上げられます。

経営判断する立場の役員に、変革への“非合理的”な心理的抵抗があること

 例えば以下です。

  • 革新に伴う巨大な埋没コストと取引コストへの抵抗。
  • 必要性認識の欠如。
  • 状況悪化の中でも働いてしまう現状継続への強い作用。

文殊の知恵の”逆”が発生している(グループ・シンク)

 合意に至ろうとするプレッシャーから、集団が物事を多様な視点から批判的に評価する能力が欠落する傾向です。特に、社内の結束やつながりが高い場合や、外部と隔絶している場合、支配的なリーダーが存在する場合などに起きやすくなります。

イノベーションのジレンマ (シングル・ループ学習)が発生している

 既定の考え方や行動の枠組みのみ従い問題解決を図っていくこと。これに馴染んでしまうと、日々の仕事を消化するだけとなり、既存の枠組みを捨てて新しい考え方や行動の枠組みが不得手になります。

対策

 対策は二つ。1つ目は外部の有能者・専門家をチームに加えることで以下の効果を創出します。

  • 意思決定者の合理性判断に客観性を与えさせる。
  • (揚げ足取りでない)本質的批判的の目を持つ役割を担わせる。
  • 平常業務の改善でなく、仕事の本質的付加価値向上を考える視点を付与。
  • 現場からの生データ・情報を、新たな視点で解釈、戦略へつなげる。

 2つ目の対策案は、戦略が創発的となることを織り込むことです。

 一発で完全を目指さず、環境に合わせ変化させることを想定して戦略を作ります。注意点は2つ。目標や変えていいモノと駄目なモノは明確化しておき、流動的な戦略変更による混乱を防止すること。不確実性対応のための資源(能力者、予算、設備)の余力を確保しておくことです。

『リーダーのスタイル』

社内に起こっていること

 現場社員の思考や行動に無駄が多い状態。

 現場社員が以下状態のような企業が当てはまります。

  • 社員が会社の方針・目標を理解/納得出来ていない。
  • 企業の業績向上にスタッフレベルでの改善効果に限界を感じている。
  • 横並びの指示系統が足かせで変革提案が出来ないためモチベーションが低下している。
  • 会社の状況が良くないことは分かるが、自分がなすべきことが分からない。

原因

 経営環境悪化で経営層も現場も乱れ業務や指揮命令系統が混乱を見せる中で、管理職や役員が『人間関係指向』型リーダーシップをとることで発生します。

 スタッフ、キャストの意見を聞き、同意を得るために時間を費やし、信頼、尊敬、コミットメントを築く。人間を中心に据えて、職務や目標よりも個人とその感情を尊重する。これらの民主主義的な型は、危機的経営状況では適切な指導者スタイルではありません。

対策

 『結果・生産性指向』型のリーダーシップを意識的に取り入れるようにします。

 従業員指向・配慮型とは異なる、専制型・体制づくり・生産性に重きを置く。会社の方向性、意思決定、考えをはっきりと説明し、部下の疑問に答える。

 部下の役割を説明しある程度の具体性を持った指示を与える。課題の理解・進捗を把握し、遂行や改善を成し遂げるための支援を与える。など、変革時には新ビジョンと明確な指導を合わせた権威主義型が求められます。

変革前にスイッチオンが必要な理由

 必要に迫られながら組織変革ができずにいる企業は、組織が硬直していることを3つの視点から解決策も含めてご紹介しました。それぞれの対応策を通じて、組織が柔軟性を取り戻し環境変化に対応する機動力と活力を得るためのスイッチを入れるのです。

 大きな環境変化への対応のためには、企業は新たな形を求めて大きな変革へと舵を切ることになります。これは、短期的にみると安定的である企業組織を人為的に混沌の状態へと持っていくことです。会社を新しい形へ再構築するためには必要なストレスなのですが、安定的な環境にいた人々にとってはどうしても歓迎できるものではありません。

 そのために組織変革がいざ起こされようとすると、組織内のあらゆるところから抵抗要因が発生します。まずは、これを意識的に排除する必要があるのです。変革への抵抗要因排除を済ませない状態では、変革の実行はおろか理にかなった変革プランの立案さえうまくはいかないでしょう。

 最後に、今回ご紹介した企業変革開始のスイッチとしても影響の大きな事業承継について述べて閉めたいと思います。事業承継が業績に好影響を与えることが、中小企業白書で明らかにされているのです。

 経営意思決定の中心を次の経営者へと引き継ぐことで、組織の硬直化が解かれ再活性して環境対応が進むことで業績を上向かせることが分かります。

 いかがでしょうか。あなたの会社でも実行できることが浮かびませんか?この回の内容を問わず経営変革について質問がありましたら、いつでもお問い合わせください。

本章のまとめ

・環境変化に応じた企業変革の具体的プランが描けない企業は多い。
・まずは「 “変革”の24マス整理(変革のニジマス整理)」を行うことを提案する。

企業変化の24マス

・6つの企業構成要素のそれぞれに対し4つの変化深度で状況を整理。
・24マスから会社の変化に重要と思うポイントを絞り込むことで変革プランが作りやすくなる。

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